2026年9月30日
遺品整理の費用は、誰が払うのか。ここを曖昧にしたまま進めると、片付けが終わったあとに、ご兄弟の間へ小さなとげが残ります。「長男だから」「近くに住んでいるから」で、気づけば一人が全部立て替えている。よくある形。
先に答えを書くと、原則は相続人が払います。相続人が複数いるなら、話し合いで分けるのが基本です。この記事では、その根拠と、故人の預金から払う方法、払う前に立ち止まるべき人について書きます。
遺品は、法律の上では故人の相続財産です。民法には「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する」という決まりがあります(民法885条)。遺品整理の費用がこれに当たるかは場面によって解釈が分かれますが、実務の落としどころははっきりしています。相続する人たちが、法定相続分に応じて分ける。これがいちばん揉めない形です。

一人が立て替える場合は、見積書と領収書を必ず残してください。あとで遺産分割の話し合いのときに、立て替え分を清算する材料になります。口約束だけで進めない。紙が1枚あるだけで、話が全然違います。
「本人のお金で払いたい」と考える方は多いはず。ただ、亡くなったことを金融機関が把握すると、口座は凍結されます。
道はあります。2019年から始まった預貯金の仮払い制度というもの。遺産分割の話し合いが終わる前でも、相続人が単独で、一定額まで払い戻しを受けられます。上限は「亡くなった時の預金額×3分の1×自分の法定相続分」で、1つの金融機関につき150万円まで(民法909条の2)。

例えば預金600万円、相続人がお子さん2人なら、1人が単独で下ろせるのは600万円×1/3×1/2=100万円。一軒家の遺品整理でも足りることが多い金額です。ただし、下ろしたお金は遺産分割で自分が受け取ったものとして扱われます。使い道の記録は残しておいてください。
ここがこの記事でいちばん大事な注意です。
故人に借金があるなどの理由で相続放棄を考えているなら、故人の財産から費用を払ったり、遺品の処分を進めたりしないでください。相続財産を処分すると、相続を認めたとみなされて(民法921条)、放棄ができなくなるおそれがあります。

放棄を考えている人は、費用の負担にも遺品の整理にも加わらず、まず弁護士か司法書士に相談を。どこまでが「調べるだけ」で、どこからが「処分」なのかは、捨ててはいけないものの記事に条文と一緒にまとめています。
故人が賃貸にお住まいだった場合、部屋の契約は原則として相続人に引き継がれます。つまり、片付けて明け渡すまでの家賃も相続人の負担です。1か月延びれば、家賃が1か月分増える。持ち家と違って、考える時間がそのまま費用になります。

連帯保証人が付いている契約なら、保証人に請求が行くこともあります。誰が動くのかを、大家さん・管理会社への連絡と一緒に、早い段階で決めてください。急ぎの退去には、私たちも日程を優先して組みます。
最後に、現場でお勧めしている段取りを置いておきます。
架け橋のお見積りは書面でお出しします。買取がある場合は、差し引きの内訳も見積書に明記するので、そのままご親族での共有にお使いください。
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費用そのものの金額感は、大阪の費用の記事と一軒家の費用の記事にまとめています。誰が払うかを決めるより先に、いくらかかるかを知りたい方はそちらから。
出典:民法885条・909条の2・921条(e-Gov法令検索)、預貯金の仮払い制度の上限額は平成30年民法改正・法務省令(いずれも2026年9月30日に確認)。法律の適用はご事情によって異なります。相続の具体的な判断は弁護士・司法書士にご相談ください。
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